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【6.14 GHCヘビー級選手権試合特集記事】GHCヘビー級選手権者・潮崎豪 ~ノアという生命体~ エース、変革の歴史

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(文・鈴木健txt.

 

潮崎豪にとっての6月14日が、今年もやってくる。

三沢光晴さんの生涯最後のパートナーとしてともにリングへ上がり、その後に訪れた突然の別れ。哀しみを拭う間もなく翌日には広島から博多へ移動し、秋山準が返上したGHCヘビー級王座を力皇猛と争ってノアの至宝を初めて巻いたのが、2009年のその日だった。

 

 あれから11年が経とうとする今、エメラルドグリーンをまとい2代目のベルトを巻く潮崎の姿を、三沢さんはどんな思いで見ているのだろう。新型コロナウイルスの影響下において、プロレスラーは改めてリングに立つことの意義と向き合った。

 

“ノアのイッテンヨン”にて清宮海斗を破った時点で、潮崎は「覚悟」の二文字を口にしていた。このタイミングでエメラルドグリーンに身を染めたのも、勝ったあとに「俺がノアだ!」と言い切ったのも、それによって他の選択肢を捨て自身の退路を断つという意図があった。

 人によってはもっと早くそんな潮崎が見たかったと言うだろう。だが、こうしたものは気運がなければ、どんなに選手自身がそう願っても絵に描いた餅となってしまうもの。一度はノアを離れ、外から緑のリングを眺めた上で戻ってきたからこそ見えるものもあった。

 

 それが2020年のこのタイミングで形となった。イッテンヨンのあの空間に身を置くことで、ようやく潮崎はノアに戻ってきた本当の実感を得られたという。

 

 あのノア愛に満ちた後楽園を経験せぬままGHCヘビー級のベルトを巻いていたら、藤田和之との初防衛戦はまた違った試合展開になっていたかもしれない。新日本プロレスの系譜にある男が挑戦者である以前に、30分以上もリング中央からほぼ動かなかったチャンピオンは、ノアという名の生命体そのものだった。

 そうした流れの中でコロナ禍に見舞われたとあれば、リングを離れたところで自身と見つめ合う機会が増えたと考えるのが自然。急性虫垂炎の手術でTVマッチ3大会を欠場したものの、6・14も休むという選択は潮崎の中になかったと思われる。

 

 プロレス人生における特別なその一日を、こうした状況下で迎えることの意味――それを誰よりも理解しているもう一人の男が動いたのも、映画を見ているかのごとく腑に落ちる。

 

「三沢さんのこと、チャンピオンが潮崎豪だから、人生の流れや宿命もある…すべてにおいて今かなっていうのがありました」

 

『週刊プロレス』6月17日号掲載のインタビューで、齋藤彰俊は潮崎の前に立った理由をそのように語っている。

それぞれの11年前と、それぞれの10年9ヵ月前…2009年9月27日、日本武道館で2人はGHCヘビー級のベルトを懸けて対戦。三沢光晴追悼興行のメインイベント、それまでともにノアをけん引してきた小橋建太も田上明も秋山準もいない締めの試合だった。

 

 セミファイナルでは全日本プロレス(当時)の武藤敬司と田上明が“社長タッグ”を結成し、小橋&髙山善廣と対戦するスペシャルタッグマッチが1万7000人(超満員)の大観衆を興奮の坩堝へといざなっていた。

 相手と闘い、三沢さんの遺影が見守る中でリングへ上がる自分の気持ちと闘い、追悼興行のメインを務めるプレッシャーと闘い、さらには先人たちの存在感と闘ったのは、潮崎と齋藤の2人だけ。共有するものを持つ男同士が10年9ヵ月ぶりにあの感覚を呼び起こすのだから、それは極めて特別な空間となるはずだ。

 

 齋藤があの頃の齋藤彰俊ではないように、潮崎もとりまく状況の中で自身を変革してきた。人はそれを「覚醒」と表現するが、今回のタイトル戦はそうした言語の持つ質感を超越した何かが生まれる過程とシチュエーションが揃っている。

 

 2020年の6・14は「三沢光晴メモリアル」と特別に銘打たれてはいない。その場にノアのファンがいてこそのものだから…三沢さんだったら、そう言うだろう。

 

 テレビカメラの向こう側にいる視聴者に対し、試合を通じてそれを感じ取ってもらう。ただし、過去をなぞるだけではなくしっかりと現在進行形のノアを描く。これこそが、潮崎が背負ったチャンピオンとしての使命となる。

 

 前回の防衛戦は、相手が藤田だったからこそノアの色が際立った。その時とは違ったバックボーンのもと対角線上に立つ齋藤を相手にしても、これがノアであり自分こそがノアであると伝えられるか。11年目の新しい景色が描かれることを期待して、6・14を待とうと思う――。

 

 

 

■ABEMANOAH “GO FORWARD” powered by ABEMA

放送日時:6月14日(日)よる7時~11時(予定)

放送チャンネル:格闘チャンネル

放送URL:https://abe.ma/3gzZx42

<試合>

▼GHCヘビー級選手権試合

第33代選手権者・潮崎豪 vs 挑戦者・齋藤彰俊

▼スペシャル6人タッグマッチ

武藤敬司&丸藤正道&望月成晃 vs 清宮海斗&谷口周平&モハメドヨネ

▼GHCナショナル選手権試合

第2代選手権者・中嶋勝彦 vs 挑戦者・井上雅央

▼6人タッグマッチ

杉浦貴&桜庭和志&レネ・デュプリ vs マサ北宮&稲村愛輝&征矢学

 

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