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丸藤正道インタビュー 2・12武道館に思う「運命」と「スタート地点」

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2021.02.02

 ノア約10年ぶりの開催となる日本武道館大会(2月12日)で秋山準とタッグを組むことになった丸藤正道。

 

 待望の聖地帰還。“ノアの武道館"で幾多の熱闘をつむいできた丸藤と秋山が組み、“武道館未体験世代"の清宮海斗&稲村愛輝組と対決する。

 

 再びつかんだ武道館の大舞台。清宮&稲村と当たる意義。秋山への思い。武道館を契機とした個人的な展望。“2・12"に向けて丸藤に現在の心境を聞いた。

 

――武道館で秋山準と組むカードが決まった

 

▼丸藤「うれしいですね。(ラブコールに)応えてくれて。いろいろあって秋山さんはノアを出ていきましたけど、僕はもともと平和主義者なので、あの人がノアを出ていった時から、いつかノアのリングに戻ってくることがあるだろうと思いながらやってきたし、そういうリングを創り上げていってやろうとずっと思ってやってきた。その中で“ノアの武道館"というものが久々に決まって、秋山さんも秋山さんで自分の状況が変わり、いろんなタイミングというか運命が重なったからこそできるタッグじゃないかな、と」

 

――1年半前のノア大阪大会で同じリングに立ってはいるが、その時とはまったく心持ちが違う?

 

▼丸藤「違いますね。おそらく秋山さんもまったく違うと思うし。あの時は、どちらかというと“他団体からのゲスト"という意味合いが強かったと思う。“ノアのリングに秋山準が戻ってきた"という感覚は今回のほうが強いと思うし、しかも武道館ですから。それは何よりもご本人とファンの皆さんが感じてることなんじゃないかな…とは思いますね」

――2012年末のディファ有明、秋山ノア退団前最後の試合で「丸藤vs秋山」ケジメのシングルマッチが行われて、試合後にあぐらをかいて言葉を交わし、ノアのリングを後にしていく秋山の後ろ姿を、ご自身は座りながら寂しげに見つめ続けていた。あれから8年以上の月日が流れた

 

▼丸藤「あの時、どんな言葉を交わしたかは細かく言わないほうが夢があると思う。確かに辞め方としては、あまり良くなかったのかもしれないですけど。僕も新聞で知ったくらいだったので…(笑) ただ、僕の中には感情的なしこりは早い段階で無くなっていて。『怒りの感情はありませんか?』ってよく聞かれたんだけど、よくよく考えてみれば、何に対して怒る必要があるんだろう?って。『ノアを捨てた』という考え方もあるのかもしれないけど、ノアを捨てて出ていったワケでもないと思うんですよ。それよりも自分がやりたいプロレスを追求したい思いとか、自分の考えと合わない人たちと居るよりは、違った環境で自分のやりたい道に進みたい。そういう選択肢があって当たり前だと思うし。俺はずっとノアに残ってますけど、プロレスラーって所詮、孤独なものだと思ってるので。表に出る職業だから周りの目や意見っていうのは気にしなくてはいけないんですけど、さてそのレスラーが何かに行き詰まった時、あるいはどうしようも無くなった時、今まで一緒にいた人間が手を差し伸べるのか…?って言ったら、俺は意外とそうでもないと思うんですよね。『残念でしたね』とか『しょうがないですね』とかさ、そんなんばっかりだと思うんですよ。それだったら自分で道を切り拓くのがレスラーだと思うし、人間としての強さでもあると思うので」

 

――結局自分を助けられるのは自分しかいない、それぞれの道を歩んだからこそ、またこうして再び交わる時が来たと

 

▼丸藤「そうですね。彼らが自分たちの道を切り拓くために出ていったのであれば、俺もここに残ってやるべき道を切り拓くしかない、と思ってやってきたから」

 

――改めて武道館に話を戻すと、ノアとしては10年ぶりの帰還。『Destination』(目的地)と銘打たれいる

 

▼丸藤「自分としては完全にスタート地点ですね。ゴールではなく。昔のシリーズの形ってさ、“後楽園ホールで開幕して最終戦は武道館"っていうのが当たり前だった。それができなくなり、選手層も薄くなり、どんどんどんどん規模が小さくなり、俺の中でも焦る気持ちというか、このまま小さくなる一方なのかな…って気持ちに陥ったことはあったんですけど、もともとノアじゃなかかった選手とかスタッフとかが一生懸命ノアのために動いてくれて、ここに戻ることができたんで。世間の人たちは…例えば俺とか杉ちゃん(杉浦)とか小川さんとか、ノアを守り抜いてきてくれたからこそ!って言ってくれることはあるんですけど、俺らだけじゃどうしようもなかったから戻れなかったワケであって。感謝してますよ」

 

――自分たちでたどり着いただけではなく、与えられたチャンスでもあると

 

▼丸藤「そうですね。だからこそ、若い選手とか武道館を経験したことない選手とかに、大いにあの雰囲気を味わって楽しんでもらって、いい試合をしてもらいたいな、って。『あぁ、俺プロレスラーだな!』ってより強く感じられると思うんですよね」

 

――その“武道館を味わってもらいたい"筆頭格ともいえる若い二人が対戦相手にいる

 

▼丸藤「うん。もしかしたら、会社の中の選択肢として“俺と秋山さんが試合をする"っていう選択肢もあったかもしれないんですけど、俺の中では秋山準に対する禊(みそぎ)の一戦はチャンピオンカーニバルに出た時に一段落してる気がするんですよね。全日本のリングでしたけど、感情的な部分でもケジメがついたし、話題性という部分でも。だから今回の武道館で俺と秋山さんがシングルをやったとしても、そこまでの目新しさが無いような気がする。それならば“昔からのノア"の匂いを持ってる二人が、若い相手を二人に闘ったほうが…って思いはありますよね。しかも秋山さんとほとんどタッグを組んだ記憶ないから」

 

――確かにGHCヘビーやタッグ、白GHC戦を通じて何度も闘い、それぞれリーダーで軍団抗争(BRAVEvsS・A・T)を展開したこともあった

 

▼丸藤「そう。だから、これが何かのメモリアル大会とかなら、若い二人と闘うんじゃなくて、例えば小川さん、齋藤さん、杉浦さん…っていう秋山さんと過去一緒のリングに上がってきた人間と闘うのもアリだとは思うんですけど、今回はノアの新しい“スタート地点"なんで、清宮&稲村というのはひじょうに適した相手ではないだろうか、と思っております」

 

――闘ってきたからこそ、若い力を前にした時の秋山準の厳しさを知っている

 

▼丸藤「厳しいですよ。ご本人は『丸くなった』と言ってますけど、独特の空気はいまだに変わってないし、ノア旗揚げの頃なんてピリピリして近づきたくないくらいの存在感を出してたんで。リング上だけじゃなくて普段から。そういう緊張感を持ってる人って今はなかなかいないし。俺がそれを経験したから、お前らもそれを経験しろ!…ってワケじゃないですけど、経験しておいたほうが後々の糧にはなるよね、っていう」

 

――とはいえ現在進行系の秋山準としては、武道館の二日後に主戦場DDTでのフラッグシップタイトル挑戦が決まっている

 

▼丸藤「うん、だから秋山さん自身も、この武道館に出ることはひじょうに決断のいることだったとだと思う。ましてや、急きょ左ヒザを手術することも決断して。僕も去年同じような手術をして、3週間くらいで復帰しましたけど、やっぱり体にメスを入れる、穴を開けるっていうのは、それだけ体に負担がかかることでもあるので、(手術をすることで)“気持ち"で持っていこうとしてる部分もあるのかな…とも思うんで、そこはしっかり僕自身もリング上でヘルプするというか。『そんなもんいらねーよ』って言われるかもしれませんけど、大いに秋山さんにも目立って欲しいと思いますね。まぁ試合後のコメントでは『9-1で動いて欲しい』って言いましたけど、俺と秋山さんならその場の状況に応じて、1-9にも5-5にもできると思うんで。ただ一つ言えるのは、足したら10以上になる」

 

――なるほど。改めてこのカードだと稲村が特に燃えていそうだ

 

▼丸藤「うん。その燃えてる気持ちをどんどん武道館まで発信していって欲しいよね。前哨戦があるワケじゃないから、なおさら。当然もう試合は始まってるし、武道館への“持って行き方"といかんによって、同じ試合内容でもまったく盛り上がり方は違ってくるワケだから」

 

――リング上で丸藤&秋山組ならではの動きなどは考えている?

 

▼丸藤「ないっすね。その場の状況で。こんな合体技をやりましょう!みたいな話をすることはないし、秋山さんもそんな気はないだろうし。だからこそ何が生まれるのか楽しみ」

 

――改めてご自身のコンディションというのは?

 

▼丸藤「最近、また良くなってきてます。前田日明さんに教えていただいた静岡の治療院にも毎月通ってますし。前田さんとイベントをやった時、あいさつした瞬間に『お前、首ダメだろ?』って。右腕を見ただけで。『このままじゃ老後は障害者だぞ』ってその場で電話してくれて。首の怪我(変形性頚椎症性神経根症)は、ずっと付き合い続けてきた怪我ではあるんで、完全に治るものでもないんですけど、1ミリでも、少しでも良いコンディションに持っていけてる実感はありますね」

 

――では今年は武道館を機に改めていちプレイヤーとしても飛躍を?

 

▼丸藤「うん、前も言ったけど、去年のノア20周年イヤーは俺がトップとしてベルトを巻いて引っ張っていきたかったんですけど、それも俺の実力不足でできなくて。今年こそ新たなスタートを切るノアで、いま一度トップに躍り出たいなと思いますね」

 

――キャリア20年も過ぎてスタイルも円熟味を増してきた

 

▼丸藤「ここ数年で闘い方も変わってきて“今の丸藤"というものを創り上げつつある…と思ってるので。明らかに何年か前の俺とは違うと思うから。それを今の“強み"になるまで持っていけるように、もうちょっと創り上げたらベルト行けんじゃねえかな…って。やたらめったら言って手が届くものでもないと思うし、あれだけ潮崎が今、素晴らしいチャンピオンなんで。ただ、俺がまた一つ何かをつかんだと思えた時に挑戦すれば、獲りにいけるんじゃないかな…って」

 

――その潮崎が武道館のメインに立つが、GHC戦「潮崎vs武藤」はどう見ている?

 

▼丸藤「当然、武藤さんは同じユニット(M's alliance)なんで応援する気持ちはあるんですけど、複雑っちゃあ複雑ですね。久々に戻る武道館でノアの選手に締めて欲しいって気持ちもあるし、かといって同じチームとして武藤さんにも獲ってもらいたいけど、久々のノア武道館の締めを武藤敬司にやられてしまうのは複雑だな…ってのもあるし。まぁ、武道館ではノアの選手同士のメインイベントが良かった…って声もあると思うんですけど、俺からすれば、今の状況は“潮崎が立っているところがノア"って感じになってるので、対戦相手はノアじゃなくても良いと思う。そこに潮崎がいる時点で“ノア"なので」

 

――いきなりスタート地点からノア同士でメイン…というのも到達感が無いというか…?

 

▼丸藤「そう。確かにノア同士でのメインだったら、どっちが勝ってもハッピーエンドっていう画(え)が浮かぶと思うんですけど、それだとありきたり過ぎるって部分もあるし。『これ、もし潮崎が負けちゃったらどうすんだろ?』っていう想像のかきたてのほうが、面白いっちゃあ面白いかも」

 

――結果がどちらになっても、その時、自分自身の気持ちがどうなるかは分からない?

 

▼丸藤「そうだね。いうなれば俺らはプレイヤー側だけど、プレイヤー側だからこその想定内で物事が終わってしまったら、ファンの人は面白くないと思うんですよね。やっぱり想定外のことが起こるから面白いんであって。まぁその“結果"が良いのか悪いのかは置いといて。最近のノアは想定外のことを仕掛けていってることが多いので。だから、武道館で俺が秋山さんの隣に立ってどう動くか。そして武道館のメイン後に俺がどんな感情になってるのか。俺自身もまったく“想定"はできないし、だからこそ楽しみに、想像してほしいね」