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武藤敬司インタビュー いよいよ武道館目前、武藤敬司インタビュー キーワードは「夢」「哲学」「原点」「第一印象」そして「クソくらえ!」

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2021.02.11

いよいよ武藤敬司がGHCヘビー級王座に挑戦するノア2・12日本武道館大会が近づいてきた。

 

ヒザの人工関節手術を経て、新体制で様々な取り組みをするノアに魅力を感じ、58歳にして団体最高王座に挑みたい思いが芽生えた。

勝てば国内団体のフラッグシップタイトル最年長戴冠記録。挑戦自体に賛否があることも重々承知している。それでもなぜ動いたのか。

 

ほかにも王者・潮崎豪の分析、ノアと自身の“哲学"の違い、ムーンサルトが使えないタイトルマッチ、声援禁止でキャパ半分の武道館、

三銃士と四天王、コロナ禍で変質するプロレスの在り方などなど。“夢"としたGHC挑戦を前に、あらゆる切り口から武藤の深みある言葉が並んだ――。

 

 

【武藤敬司インタビュー】

 

――まず改めて王者・潮崎豪の印象を

 

▼武藤「まぁひじょうに強いチャンピオンだよな。コンディション的な部分もそうだし、力も強いし、スタミナもある。あと、コレは俺の個人的なアレだけど、そこには三沢社長の影もチラつくというか。見かけは小橋に似てるんだけど、考え方の深い部分では三沢社長なんじゃないかなっていうのを感じたりしてるな」

 

――これまでの“ノア"を凝縮したような存在だと。ただ、自身はノアの選手との育ちと成り立ちの違いを強調してきた

 

▼武藤「うん、全然違うよ。プロレスは基本“なんでもアリ"のなかで、それぞれが自分たちの哲学を持ってるワケであって。ノアにはノアの哲学があって、俺には俺の哲学というか基礎があるわけであって。やっぱり俺は猪木さんの背中を追うところから始まってるからさ」

 

――潮崎vs杉浦のGHC戦を見たあとに「四天王の時からのこういうスタイル、そういうバイブルだけど、俺のバイブルはまた違う。俺はこういうスタイルには付き合わない」と言っていたことが多く取り上げられた

 

▼武藤「これはね、ノアだけじゃなくて現代のプロレス界全体に言えることだけど。技がデフレ(※モノの値段が低い)の状態なんだよな。俺たちはどれだけ技をインフレ(※モノの値段が高い状態)に持っていきたかったか。ハルク・ホーガンなんてギロチンドロップ一発でギャラ何千万だ!?って話で。それが俺たちがやったって大した金額にならずに、若手がやったらそれこそ二束三文だ。だから、いかに“一発"の価値を上げるか。俺はそう思って培ってきたプロレス人生だから、その哲学っていうのはぶつけたいよな」

 

――どっちのスタイルに引きずり込むか、という勝負になる?

 

▼武藤「うーん、もしかしたら、これ(スタイルの違い)もまたプロレスだからさ。その中でケミストリー…化学反応だよな」

 

――哲学ぶつかり合うことで、どちらの哲学でもない別物が生まれるかもしれないと…?

 

▼武藤「うん、それで良いものが生まれればいいけど、美しくないものが生まれる可能性もあるよな。そこもまたプロレスの深さだ」

 

――昨年4月にフリーに転向して、ノアへの本格参戦を開始。GHCヘビーを狙うと早い段階から口にしてきたが、慎重に過程を踏んできた

 

▼武藤「ノアという山を登ってる以上は、頂上を目指したいじゃん? 山登りしてるワケだからさ。それにはまずリング上で存在感を示していく必要があるから。それと俺個人としても、コンディション的な確認作業が必要だった。近年シングルマッチとかをやってきてなかった状況で、(ヒザの人工関節)手術をして、シングルでの清宮戦とか谷口戦を経ることで、『自分は大丈夫なのか?』っていう。そこで『大丈夫だ』っていう確信を得て、いろんなTPOがそろって名乗り出たよな」

 

――コンディションについては『日々“昨日の武藤敬司"に負けないように努力してる、これが“3年前の武藤敬司"だと負けちゃう』と話していたことが印象的だった

 

▼武藤「かといってコンディション的に実は45歳から55歳くらいまでがしんどかったんだよ。プロレスは続けてたけど、もうヒザがボロボロになってて。50くらいから人工関節を考えてたんだけど、そうなるとプロレスを辞めなきゃいけない。だったらダメだな…って葛藤が続いてて。それが3年くらい前に今の(医師の)先生と知り合って、『武藤さん、人工関節にしてもプロレス辞めなくていいよ』って言われて。その先生の言葉を信じて手術して、今のほうがその時(45~55歳の10年間)より状態が良いから。練習もできるし」

 

――できなかったマシンができるようになったりとか…

 

▼武藤「そうそう。足のトレーニングやるにしたって、痛いからどうしても限界があったし。今のがいいよ。そりゃ親からもらったヒザよりは思うようにならないけど。(筋トレではない)有酸素運動も今のほうができるからさ、当然コンディションは良くなるわな」

 

――そのなかで再びシングルマッチができるという手応えをつかんでいったと

 

▼武藤「うん。清宮戦とか、谷口戦を通じて自分にクエスチョンをかけていってね。100\%満足はいかないけどさ、自分の中で大丈夫だってラインには届いたよな」

 

――とはいえ、改めて58歳で団体の頂上のベルトを狙いに行く…というのは極めて異例なことでもある

 

▼武藤「本当にねえ、それは悩んだんだよ。もしかして俺がこうやって出しゃばることによって、プロレス界の足を引っ張ってるんじゃないか?って。だけど! それで折れてたら、自分自身は“ゼロ"なんだよ。何もないんだよ。確かに一歩踏み出したら、批判かもしれない。だけど、きっと“何か"は生まれる、“ゼロ"ではないじゃん? 山登ってる以上“ゼロ"はイヤだからさ。だから決断したんだよ。どう思われるかは正直わかんねえよ。あとは俺次第だ」

 

――潮崎との前哨戦は1勝1敗のイーブンだったが、ムーンサルトでピンフォール負けしたインパクトも強かった

 

▼武藤「俺にムーンサルトをかけてきたヤツって多分初めてなんだよ。でもこの前、大日本で中之上(靖文)が(BJWストロングの)チャンピオンになったらしくて、電話がかかってきてさ。『すみません、ムーンサルト使わせていただきました!』って。でも潮崎の野郎…俺に無断でムーンサルトを使った上に、俺自身にムーンサルトをかけやがって(笑) まったく失礼なヤツだよ…」

 

――自身は人工関節手術でムーンサルトを封印、“ムーンサルトが無いタイトルマッチ"となる

 

▼武藤「いやぁ、元気だったら俺のほうが数段美しい、説得力のあるムーンサルトができんだから。まぁでも、良い意味で“考えさせてくれる"きっかけにはなったよな。本来であれば、『クソ! 俺にムーンサルトやりやがって。俺のムーンサルトを見せてやりたい』ってなるだろうけど、それができない。じゃあどうやって説得力のある倒し方をするか?っていうのを考えざるを得ないよな。技ってよりは、試合の中でどうやってストーリーを組むか。そうやって倒していくしかないと思う」

 

――今回の武道館はノアファンからすると待望の舞台、そのメインに自身が立つというシチュエーションについては?

 

▼武藤「俺がノアに本格的に上がるようになった時は、ちょうどコロナ禍が始まった頃だよな。ただ、コロナの状況が進むにつれて、(様々な取り組みをした)ノアの勢いっていうのも感じて。だから今日(こんにち)まで、こうして居座ってんだけども。ただ、俺だって日本武道館で試合したことは多数あるわけであって。過去振り返ってみれば、お客さんがいっぱい入ってた武道館で試合したこともあるけど、俺が全日本の代表になった時、だんだんお客が入らなくなって苦戦していった…っていうことも経験してんだよ」

 

――確かに“武道館から離れざるを得なかった"という経験を、いわゆる武藤全日本時代に社長としてしている

 

▼武藤「そうなんだよ。それにあの空間っていうのは、本当に厄介だよ? 広いし。お客さんがいれば、すごく良い空間になるけど…。まぁ今はこのコロナの状況で、(定数や応援での制限があって)お客さんを全部入れられないからね。そこはホントに残念だよなあ…。最初は俺にブーイングをしてたヤツも、試合が終わった後には『ウワー!』って(声援の状況に)持っていける自信もあったし、逆に全員から『ブー!!!』ってなる状況にもできたかもしれない。俺、なんでもできるからさ」

 

――声援禁止、キャパ50\%の武道館は、長いキャリアのなかでも当然初めてとなる

 

▼武藤「まぁ俺がデビューした35年以上前の新日本の会場なんて、お客さんはウンともスンとも言わなかったんだよ。入場曲もないし。ただ、その時の猪木さんの教えは『常に相手を見て試合をしろ』だった。ウンともスンとも言わないからって、お客に媚(こび)を売るような試合してたら、すんげー怒られたからね。スタート地点がそこだから。俺からしたら“原点"だよ」

 

――会場に来られない分、映像配信の幅が広がってプロレスがコンテンツとして変質しつつある

 

▼武藤「そうだよな。ABEMAで放送されてる…ってことに思うところがあってさ。スマホで見るワケでしょ? 例えば今の若い子がさ、何にも知らずに、ABEMAでたまたまプロレスを見たとするよ。でも、そこで大の男が40分も50分もへばりながら闘ってたら、たぶんパッとチャンネル変えられちゃうよ? もしかしたら、そういうことも意識しないといけないかもな。スマホでパッパッって見てたら、大事なのは“第一印象"だからさ。それが良かったらそのまま見てくれるだろうけど」

 

――なるほど…では、チャンピオンになったらどんな風景をみせたい?

 

▼武藤「そんなの描けてないし、頂上行ってみないと景色は分かんないよ。でも過去の歴史からいえば、俺は行くテリトリー、行くテリトリーでベルトを獲ってきたんだよ。で、少なからずその時は、そのテリトリーに風が吹いたよ。新日本にしても、全日本にしても、NWAにしても、WCWにしても。あと、コロナで社会生活そのものが変わっていくなかでさ、年寄りが社会からはじき出されつつある、悲しい状況も感じてんだよ。同じジェネレーションの人間が。そういう人たちにも、本当に元気になってもらいたいよな。プラス、プロレス界だって去年はライガーが引退して、中西が引退して。だんだん“おじ捨て山"みたいなムードが出てきてるなかで……俺はそんなもんクソくらえ!だと思って。そういう意地ってモンも見せたいよな」

 

――自分よりキャリアが下の人間も引退していく状況になりつつあるが、自分自身はあえて“逆"を行きたい気持ちがあると?

 

▼武藤「そうそう。言っちゃナンだけど、三銃士・四天王なんて俺しか残ってねえからさ。むしろ俺の(自分の強みとしての)“専売特許"だと思って、やっていこうと思ってるよ」

 

――勝てば“3大メジャータイトル"戴冠で、団体の最高王座を58歳で獲った例もなく、最年長戴冠となる。改めて“夢"としたGHC獲りに向けて?

 

▼武藤「チャレンジャーとして名乗り出てから、注目されるようにもなって、比例して練習にも気合が入って。その充実感、ひじょうにレスラー冥利に尽きるというか、気持ちがいい。だからベルトを奪って、この“刺激"をもっともっと味わいたいね」

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