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【GHCヘビー級王座戦深掘り】揺るぎなき世界観を持つ者同士の10・28GHC戦。刺さる言葉の果てにジェイクと拳王が味わうのは――

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 ジェイク・リーが2022年まで在籍した全日本プロレスでは、2018年10月から2020年3月まで第62代三冠ヘビー級王者・宮原健斗の一強時代が続いた。川田利明と並ぶ最多連続防衛回数を記録したあと諏訪魔に敗れ王座を明け渡したものの、その間に独自の世界観を確立。

 誰がベルトを巻いても全日本=宮原のイメージは揺るぎなかった。プロレスは、勝敗とは別次元の価値観でも張り合わなければ並んだ、超えたとはならない。

 宮原とNEXTREAMに属していたジェイクは観客の心を惹きつける絶対的エースを至近距離からつぶさに観察し、真逆のやり方でなければ対等には闘えないと分析、その道を模索する。同ユニットを抜けた以後、常に反体制として活動を続けたのは必然だった。

 その中で、宮原と渡り合えるほどの世界観を確立。実績の方も2021年6月に初の三冠ヘビー級王座を獲得し、二強時代の到来を告げた。

 こうした過程を振り返ると、10・28福岡国際センターでGHCヘビー級王座を懸けて対戦する拳王の足跡と重なる。常に清宮海斗の対角線上に立ち、同じく反体制ユニットとなる金剛をけん引。そうした立ち位置にあっても、ファンの支持を高めてきた。

 

 90年代後半、反体制の象徴だったnWoのメンバーとなった武藤敬司が「俺のいるところが本隊」と言ったように、あるいはCHAOSのメンバーとして棚橋弘至と闘った中邑真輔がカリスマ性をまとったように、見る側に響くものを提供すれば支持されることはこれまでの歴史が証明している。立場こそ違えど、ジェイクと拳王は現在のプロレスリング・ノアでそれを体現する二人と言えよう。

 ただ、今回のタイトルマッチに関してはNOAHの看板を背負った拳王が全日本から来たジェイクに挑戦するシチュエーション。実際、9・24名古屋国際会議場におけるマイクのやりとりも、それに沿った言葉のせめぎ合いとなった。

 2017年11月19日、まだ緑のマットだった後楽園ホールのリングでグローバルリーグ戦初優勝を果たし「てめえらクソヤローどもをな、日本武道館まで連れていってやるからな!」と宣言した拳王。当時は日本武道館への帰還など夢のまた夢だったが、その3年3ヵ月後の2月12日に現実となった。

 もちろん拳王一人の力ではなかったにせよ、有言実行によりファンの信用を獲得。言語感覚のポテンシャルがもとからあったとはいえ、それが受け手に突き刺さり心を揺さぶることができるかどうかは、選手自身の媒体力による。

 その拳王がジェイクに対し言い放った「NOAHの舵を握ってどこに連れていくつもりだ?」のひとことは、強烈な殺し文句だった。本当に武道館へ“連れていった”人間だからこそ響くフレーズを、ここで出してきたのだ。

 

 これに触発されたか「知的で偉そうな」(拳王)イメージで自身をクリエイトしてきたジェイクが、実にパーソナルな言葉を返した。潮崎豪戦前から出していた“出戻り”のワードをさらに深掘りさせた「何をやってもダメ、(全日本に)入ったにもかかわらずデビューちょっとでやめ…だけどそんなやつが今、ベルトを持っているんだぜ。夢があると思わないか?」のセリフは、共感に頼ることなくきた人間としては異例の内なる声だった。

「正統派で、みんなの声援を力に変えて『皆さんのおかげで勝てました!ありがとうございます!!』っていうの、俺は無理ですね。俺を応援するんだったら、ほかのやつを応援しろって思っちゃうんですよ。俺が求めているのは、それによって発生する会場の雰囲気なんです。その力によって相手が立ち上がってくる。そうだそうだ、それでいいんだ。もっとやろうぜですよ。そうしたらもっと面白いドラマが作れる」

 2年前、自身の世界観を確立させた頃のジェイクは共感に背を向けることによって発生する熱量を求めていた。現在は上がるリングも立場も違っているのでまったく同じ姿勢ではなくとも、リング中央で天を指さし、相手の前で高貴に振る舞う姿とはかけ離れた言葉があの日、観客とNOAHファンに投げられたのだ。

 それをコンプレックスと表現したら、本人は否定するかもしれない。ただ一度、全日本を退団した事実はジェイク・リーというプロレスラーを形成する上での原動力となっているのも確か。

 

「おそらく、あそこで途切れたからだと思うんですよ。あの時の後悔を払拭したい。いろんな人が支えて、応援してくれてデビューしたにもかかわらずですよ。死ぬ時に、本当に後悔するのはあそこなんです。それを払拭するためにというのがずっと闘いたいと思える一番の理由なんだと思う。やっている中で、俺の人生は闘いの連続なんだと気づけた」

 これも2年前に聞いた言葉。プロレスラーとして復帰したあとも拭えずにきた“出戻り”という過去を超えるべくやってきたジェイクは、潮崎戦でそのワードを口にすることで物語を描いた。

 その感情に、さらなる刺激を与えたのが拳王――ということになる。敵対していながら、お互いが繰り出した刺さる言葉。それでいて、いざリング上で向き合えば説明不要のシンプルな攻防となる。

 

 そこが、これまでの防衛戦とは異なる二人だからこそ描ける風景。2ヵ月前のN-1 VICTORYでは拳王が勝利をあげており、公式戦の中でも屈指の好勝負と評されたが、シチュエーションが違うことでお互いの向き合う姿勢も変わってくるため、ほぼ参考にならないと思われる。

 ベルトの行方はもちろん重要だが、あくまで自分がNOAHの舵をとるという明確な目的のもとリングに上がるジェイクに対し、外から来た刺激を味わうことで拳王の中に何が生じるかも興味深い。揺るぎなき世界観を持つもの同士の闘いの熱量は、見る者にもなんらかの影響を及ぼすだろう。

(文提供:鈴木健.txt)

「ABEMA presents DEMOLITION STAGE 2023 in FUKUOKA」

・日時:2023年10月28日(土)開場:14時30分/開始:16時00分

・場所:福岡・福岡国際センター

 

◆10.28福岡国際センター大会 詳細は こちら

 

皆様のご来場、お待ちしております!

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