【GHCタッグ戦線に異変あり!?】GHCタッグ王者組・丸藤正道&杉浦貴の前に立ちはだかったのは谷口周平と石川修司!いったいどんな戦いになるのだろうか…?
暴走大巨人でタッグの醍醐味に開眼。石川修司が谷口周平と共有するあの日
8月4日より横浜武道館にて開幕した今年の「N-1 VICTORY」。今シリーズは言うまでもなくリーグ戦の行方に話題が集中することとなるが、その死角を突くかのような仕掛けを用意していたのが谷口周平だった。
第5試合の8人タッグマッチで丸藤正道からタニスペシャル(押さえ込み)で3カウントを奪った谷口はぴょんぴょんと飛び跳ねて、子どものように喜んだ。それもそのはず、直接勝利をあげたのは2019年6月13日のシングルマッチ以来(エディオンアリーナ大阪府立体育会館第2競技場、ワイバーンキャッチでギブアップ)、実に5年1ヵ月ぶりだった。
さらに谷口は、杉浦貴もチョークスラムで叩きつけると、その杉浦と保持しながらサクソン・ハックスリー&ティモシー・サッチャーに奪われた(2023年5月4日、両国国技館)GHCタッグ王座へ挑戦表明。「おまえ、タッグパートナーいねえじゃねえかよ! いつもひとりぼっちだもんな」という元パートナーから放たれたキツい言葉にもしゅんとすることなく「実は新しいパートナー、来てもらってんだよ!」とドヤ顔で言い放った。
そこでぬうっと入場ゲートに登場したのは、丸藤&杉浦ならずとも意表を突かれるほどの巨人だった。今年に入り全日本プロレスを退団し、プロレスリング・ノア参戦5戦目でニンジャ・マックを破り第3代GHCハードコア王者となった石川修司――もちろん、その実力と実績を思えば挑戦に名乗りをあげるのはなんら不思議ではない。
とはいえ両者の接点はほぼなく、大巨人がタッグ戦線に参入することの喜びと「それにしてもなぜ谷口と?」といった戸惑いが入り混ざったリアクションに客席が包まれたのも当然だった。ところがそうした空気もおかまいなく、リングに上がった石川をまるで十年来の親友のように「修ちゃん」と呼び、ベルト挑戦の同意を得ると「周ちゃんと修ちゃんでいくぞ!」(ここはもしかすると「修ちゃんと周ちゃんだったのかもしれない」と高らかに宣言。
フレンドリーな呼び方だと、いずれも「シュウちゃん」。その事実をもってタッグチームとして成立するのだから、世の中何がどうなるかわかったものではない。リング上とバックステージで、石川は「2本目をいただきましょう」と口にしたように、ハードコア王座に続くベルトを手中とする目的のもと谷口の誘いに乗ったと思われる。
ただ、我々が知らぬだけでけっして薄くはない関係にある可能性も考えられる。そう思い立ち、横浜武道館の翌々日に更新される週刊プロレスモバイル連載中の石川修司執筆「帰ってきたジャイアントなコラム」に注目してみた。
ところがそこにしたためられていたのは、横浜の翌日に名古屋で開催されたマンモス半田の引退試合に関する必要以上にアツい思い。よりによって、谷口よりもマンモスを優先するとは…とも思ったが、ここで何かを明かしてしまうよりも謎の部分があってこそ関心は引くし、相手もデータが乏しい分やりづらくなる(そうは言いつつ、タイトル戦当日の12日更新分で触れるかも…)。
そんな石川と谷口ではあるが、実は重要な大会でチームを組んでいる。2019年8月11日、全日本後楽園ホール「青木篤志追悼大会」のメインイベントだ。
石川&諏訪魔の「暴走大巨人」に谷口が加わったトリオは、宮原健斗&青柳優馬&丸藤と対戦し青木さんに勝利を捧げている(諏訪間が青柳をピンフォール)。この時、石川は「青木さんが作ってくれた縁だと思うんで、またタイミングが合えば、今度は(谷口と)対戦してみたいですね」とコメント。
今回も対戦ではなく組むシチューションだが、肌を合わせてみたいと思わせる何かを谷口から感じたことになる。推測するに、それは暴走大巨人結成前の時点で諏訪魔に抱いたものと似ているのではないか。
「僕が全日本へ上がるようになったのはまだユニオンプロレス所属の頃で、ほかのリングへ上がる時とは明らかに違う緊張があったんです。だから諏訪魔さんとも組むまでは緊張してほとんど話したことがなかったんですけど、それが変わったのは、やはりシングルでやったのが大きかったと思います。リング外での言葉による会話以上に、試合の中で技を出し合って会話できた」
以前、諏訪魔との距離感が縮まったことについて聞いた時、石川はそう言っていた。やはりプロレスラーは日常の中ではなく、リング内の会話によって関係性を紡いでいくもの。それは組むにあたっても同じだろう。
元・三冠ヘビー級王者の肩書きを引っ張り出すまでもなく、シングルプレイヤーとしても確固たるステータスを築いている石川だが、諏訪魔との出逢いによってタッグの醍醐味にも開眼した。暴走するだけでなく、レスリングの下地があるパートナーとはなんだってやれた。
それが東京スポーツ紙制定「プロレス大賞」最優秀タッグチーム賞3年連続受賞(2017~2019年)のとてつもない実績へとつながった。諏訪魔と谷口は同じレスリング出身というだけでなく、階級こそ違えど全日本代表選手合宿で一緒になるたび練習をともにしている。
あの日、青木篤志の名のもとに同じコーナーへ立った3人だからこその“手応え”があった。谷口の指名と石川の呼応の裏に、それが見え隠れするのは気のせいだろうか。
「あいつら、連絡先も知らないでしょ。どうせ会社が用意したんじゃないか?」と、副社長がそれを言うか!?と突っ込みたくなるような言葉で丸藤は斬り捨てたが(返す刀で「控室では一人のくせに」と谷口の個人情報を晒す)、石川については杉浦ともども対戦を楽しみにしていた。ハードコア王者ではあるが、タッグに限らずシングル戦線に入ってきても楽しみな存在だけに、その言葉は本音だろう。
丸藤と石川は、前述の試合を含め2度対戦(1度目が2018年10月28日、DDT後楽園ホール。佐々木大輔&石川vs丸藤&竹下幸之介20分フルタイム)。杉浦はこれが初顔合わせだ。
大きく分厚い肉体から繰り出されるヒザ蹴りと腕パンチ、そしてスプラッシュマウンテンやスープレックスの投げ技が主武器だが、もっとも気をつけなければならないのはそのサイズからは想像できぬほどのスピードと瞬発力。これに百戦錬磨の丸藤と杉浦がどう対抗するのか。
新鮮味という点で自分と王者組2人の絡みが注目されるとしても、石川自身が望んでいるのは谷口の覚醒。かつて、マイバッハ時代は“暴走鉄仮面”の異名をほしいままにした。
諏訪魔+石川も、谷口+石川も暴走+大巨人となる。なんとなく、石川の狙いが読めてきた――。
(文・鈴木健.txt)